最初は感動した、でもすぐに、悲しみが訪れたんです。

r-mutt2007-04-23

結局のところ、誰かを失ったことがある人は、やはり強いのだと思う。

ぼくなんかは口先だけでフィーフィー言ってるだけなので、やはりたいしたことないのだけど、イキシニを経験したことがある人はやはり優しい。幸いなことにぼくはまだ、親しい人の死に遭ったことがない。でもそれはぼくが先に死なない限り、いつか必ずやってくるわけで。

というか、なんか死の体験を礼賛しているようだ。ちがくて、そういうんじゃなくて、すごく遠まわしな表現になるけど、話を分かりやすくしよう。ルック。

登場人物は2人います。「あなたの大切な人」と「知らない人」。二人が一緒に行動していて、偶然にも(そして不幸にも)事故に遭遇します。残念ながら「あなたの大切な人」が死にます。ほんの数歩の距離にいた「知らない人」が生き残りました。

あなたは事故後「知らない人」に会います。事故の内容を知るためです。あなたは知りたい、知らなければならないと思います。あの人はどうしてこんなひどい目に遭わなければならなかったのか。どんな事故だったのか。そしてあのひとの最期の瞬間は、いったいどんな表情をして何を話していたのか。

「知らない人」と対面したとき、あなたは少なからず救われた気がするのではないでしょうか。ああ、この人の口から、わたしの知りたかったことがようやく、と思います。それはある種、感動と呼ぶことができるでしょう。

けれど、どうでしょうか。あなたが直後、感じはじめるこのやるせなくて、およそ憎しみのような思いは、いったい何だって言うのでしょうか。あなたはきっと思うでしょう。思ってはいけないとは分かっていますが、あなたはきっと思ってしまう。「なぜ大切な人は死に、この人は生き残ったのか」

間違いなく言えるのは、決して口にしてはいけない言葉があるということです。そして、誰も悪くないと思うしかないのです。「知らない人」だってあなたの感情を理解した上でやってきているわけです。厚意でやってきてくれているのです。誰を恨んだって、もう物事は仕方の無い場所まで運ばれてしまっているのです。

佐渡でそんなこと考えながらぼーっと天井見上げてた。やさしい人だ彼は。すこし優しすぎるくらい優しい。僕はたぶん思ってしまう。