ナイル、欲望が共通言語、うまく見つけるよ。

国家というのは実に興味深い。外国に発信されるのはその国のいいところ綺麗なところ美しいところばかり。CNNのCMを見ればわかる。どの国だって観光客に外貨を落としてもらおうとプロモートに必死。街角に座り込む失業者や、花や果物を売るストリートチルドレン、道のど真ん中で小競り合いをする若者や、ゴミ収集車の上で遊ぶ子供たち、平気でぼったくるシーシャ屋、うっすらカビたパンなんて絶対に映さない。

24時からナイル川を南北に移動して朝まで遊んだ、というか見て回った。そこにあったのは昼間とは全く別の顔を見せるカイロ。いったいどうなってるんだ?なんてくだらない疑問はもう浮かばなくなった。これが普通なんだ。みんなやっぱり同じなんだ。夜な夜な騒いでる子供もいれば、あったかいベッドの中で夢見てる大人もいる。スナックでベリーダンスを踊る女がいれば、チップをばらまく男がいる。チープな建物に薄暗い入口、怪しくほほ笑む女たち、好きあらばバクシーシをねだる正体不明の若者。天井からぶら下がる風船、その下で女たちがテーブルを回るねだるマワるネだる寝だる。

ギャルソン(と呼んでいいのかわからないけど)は昼間みやげもの屋をやってから、こっちに仕事に出てくるらしい。ダブルワーカーは果てしなく多い。みんな一つの仕事では食って行けず、たいていの人はタクシー運転手の仕事をかけ持つ。彼はそれを疑問に思わなくなった。「仕方ないさ」とだけ言って空いたビール瓶をエジプト人らしくゆっくり気だるく片づける。目の前ではベリーダンサーが踊ってる。目が合うと少し恥ずかしい気持ちになる。手持ちぶさたでビールを飲む。シーシャを吸いたくなる。

世界は別に狂ってない。狂っているとは思えない。分かりきってること、まぎれもなく確認のための文章。