HENZAI

 もしかしたら、この事故で亡くなるのは自分だったかもしれない、と暗室で人々は息を飲む。暗い・暗い・部屋の・部屋の・底で・今日も。

 モニターに流され続ける映像。ブルーシート。担ぎ出される人。血痕。

 唐突に雨が降り出す。「彼らは彼らであって、彼らは僕ではない」――そんなことは分かっている分かりきっているのだけれど、それでもなぜ、今、僕は、涙するのか。

 映像に蓋をし、欠伸を一つし、日常に帰っていく人間を僕は信じることができるだろうか。「そこ」とはあからさまに隔絶されたように生活できる人間を僕は信じることができるだろうか。

 これは偽善ではない。偽善なんかであってたまるものか。



 もしかしたら、この事故で亡くなるのは自分だったかもしれない、と暗室で人々は息を飲む。暗い・暗い・部屋の・部屋の・底で・今日も。

 モニターに流され続ける映像。ブルーシート。担ぎ出される人。血痕。

 唐突に雨が降り出す。「彼らは彼らであって、彼らは僕ではない」――そんなことは分かっている分かりきっているのだけれど、それでもなぜ、今、僕は、涙するのか。

 映像に蓋をし、欠伸を一つし、日常に帰っていく人間を僕は信じることができるだろうか。「そこ」とはあからさまに隔絶されたように生活できる人間を僕は信じることができるだろうか。

 これは偽善ではない。偽善なんかであってたまるものか。