百億回の愛、地球半周して、合計598円になりまーす。

r-mutt2007-05-05

村をすり抜けるように川が流れていた。ヨシ川と呼ばれていた。なぜヨシなのかはわからない。夏の終りに最後の大正生まれが逝った。詳しい理由はもう誰もわからない。

そして彼女は少し汗ばんでいる。いや、汗ばんで、いた。融けた鉛を蹴りだしているみたいに、足は思うように前に進んでくれなかった。

彼女はヨシ川の中を歩いている。いや、歩いて、いた。下流に向かってただただ歩き続けていた。

彼女にはよく分らない(そして彼女は結局わからない、まま、だった)。なんでこんな川の中を歩いているのか、彼女には最後までよく分らなかった。

次にヨシ川を通りがかったのはそれから1時間後のことだった。そこから4キロ先、ヨシ川下流を車が通りがかったのは、それからさらに2時間後のことだった。(だって暑かったから、仕方がないんよ。日ぃ落ちんと出る気もせにゃ、と初老の女性は涼しげに言った)

彼女の半分浸かった右目は遠くを仲良く流れる2つの蛍を見ていたッつーかなんでこんな川の中でずぶずぶと砂の音を聞いてなきゃいけないのッーかムカつくんですけど何がムカつくとか意味分かんないけどでもなんかムカつくんですけどでももーぜんぶどーでもいいやーあたしもっと綺麗に生まれてたらきっとこんなんじゃなかったはずなのにさーズルいよねーみんな足細いしさーだれみたいな何それみたいなシマウマかよみたいなてかなんでシマウマあージャブジャブるっせなー入ってくんなよ水もうみずみずるっせーな

それでも僕は彼女の笑顔がとても好きでした。